準備
論文リストの入手
Scopusなどの論文検索システムを使うと、条件に当てはまる論文を検索して、リストをダウンロードすることができます。下のファイルは、Scopusで入手した、分野が材料科学(“MATE”)であり、 タイトル・概要・キーワードの中に”magnetic coerciv*”が含まれている論文のリストです。これをExcelで開き、何らかのテーマを決めてデータを並び替え、材料の磁気特性が載っていそうな論文をいくつか選びます。 そして、それらのDOIの列をコピーします。
マイリストの作成
Starrydata2にログインし、Magnetic Materialsデータベースに入ります。Starrydataのアカウントをまだ持っていない場合は、SignUpを押して必要事項を入力してからログインし、Magnetic Materialsデータベースをクリックします。そして、左側のメニューバーのMy Listsと書かれた部分に行き、New List欄に、今回作成する論文のマイリスト名を入力して、Enterを押してください。すると、新しいマイリストが作成されますので、そこをクリックし、そのマイリストに入ってください。
DOIのアップロード
コピーしてあったDOIのリストを、左下のInput DOI listにペーストし、Uploadボタンを押します。

データ収集
マイリストの中から、論文を1本選びます。FigureとSampleが0の論文が、データ未収集の論文です。

Original Paperをクリックし、元論文にアクセスします。

論文のPDFを開いて、磁化ヒステリシスのグラフを探します。見つかったら、スクリーンショットを撮ります。(Acrobat readerの場合はスナップショット、WebブラウザならOSのスクリーンショット機能か、ブラウザ用のプラグイン(FireShotなど)を使うと良いです。


磁場の単位について
磁場の単位は、非常にややこしいです。論文を書くような研究者であっても、磁場と磁界を間違えて使っていたり、単位を間違えてしまうことがあります。
磁場(Magnetic field)という単語は、磁束密度(Magnetic flux density)を表す時もあれば、磁界の強さ(Magnetic field strength)を表す時もあります。とりあえず覚えておいてほしい関係式を、下に示します。
磁束密度 B = 真空の透磁率 μ0 × 磁界の強さ H
真空の透磁率μ0を含めた表記が磁束密度Bで、含めない表記が磁界の強さHです。
μ0HはBと同じ意味です。Hのことではありません。
磁束密度Bの単位はG(ガウス)またはT(テスラ)です。
Gがcgs単位系(ガウス単位系)、TがSI単位系の単位です。
1 Tは1 Wb/m2 (W: ウェイバー)というSI単位とも同じです。
磁界の強さHの単位はOe(エルステッド)またはA/m(アンペア パー メートル)です。
Oeがcgs単位系、A/mがSI単位系の単位です。
磁場の単位の換算表を書きます。
真空中(大気中)の磁場については、以下の換算表で変換できます。
磁束密度B | 磁場の強さH | ||
cgs単位系 | SI単位系 | cgs単位系 | SI単位系 |
1 G (0.001 kG) | (0.1 mT) 0.0001 T | 1 Oe (0.001 kOe) | 79.58 A/m (0.07958 kA/m) |
10 G (0.01 kG) | (1 mT) 0.001 T | 10 Oe (0.01 kOe) | 795.8 A/m (0.7958 kA/m) |
100 G (0.1 kG) | (10 mT) 0.01 T | 100 Oe (0.1 kOe) | 7958 A/m (7.958 kA/m) |
1000 G (1 kG) | (100 mT) 0.1 T | 1000 Oe (1 kOe) | 7.958×104 A/m (79.58 kA/m) |
10000 G (10 kG) | (1000 mT) 1 T | 10000 Oe (10 kOe) | 7.958×105 A/m (795.8 kA/m) |
磁場の単位で一番ややこしいのは、以下の違いです。
・cgs単位系では真空の透磁率μ0は1で、単位はありません。
・SI単位系では真空の透磁率μ0 は 1.2566×10−6 (磁気定数)で、単位は N A−2 です。
この結果、磁界の強さHという物理量の次元が、単位系によって違ってしまっています。このため、磁界の強さHが関係する物理量(磁化Mなど)を扱う際には、単位系によって違う公式を使わないといけないという異常事態になってしまっています。
早く全部SI単位系に統一してくれればいいのですが、T⇔kOe換算の簡単さから、ついついcgs単位系を使いたくなってしまうので、なかなか統一されないんですよね。
※真空の透磁率という表現自体がそもそも間違っています。真空は透磁しないので、単に磁気定数と呼ぶのが正しいそうです。磁気定数μ0は、電流が空間に作る磁場をSI単位系で表す場合に必要になる係数です。 磁気定数μ0を、物体の透磁率μと同じ形で扱おうとしてこんな関係式を定義したのかもしれませんが、透磁率μなんて普段使わないのでそれほど意味はないと思います。このためcgs単位系の方が磁場の本質を直観的に表しているような気もします。
それならば磁界の強さHなんて使わないで、全部磁束密度Bで表せば問題ないようにも思えるのですが、そうすると今度は、測定時にかけた磁場の話をするときに面倒なことになります。外部磁場の磁束密度Bと、試料内部の磁束密度Bが違ってしまうんです。これは、試料の磁化率χの効果です。だから、試料にかけた外部磁場について話したい時は、磁界の強さHで表現しないといけないことになります。(口頭ではよく「試料に5Tの磁場をかけた」などと言ってしまうんですが、厳密にはこれは正しくない表現なんですね。)